中野里 陽平
株式会社玉寿司 代表取締役社長
中央区倫理法人会 会員
私が31才の頃、当社は苦境の只中にいました。多額の有利子負債に耐えながら経営していたのです。やがて、不良債権処理を時の政府が推し進める決断をし、バブル崩壊以降、借金に苦しむ企業の『私的再生』か『法的整理』か審判される時を迎えたのです。
既に倫理を学んでいた父は、ここで『捨我得全』の実践を断行しました。私達は暖簾の信用を残す代わりに一族の資産をすべて放棄したのです。辛い決断でした。しかし、父に迷いはありませんでした。 その後、事業を継続させるべく、取引銀行に事業再生計画を説明し、私を後継者として承認し、事業継続のチャンスを頂けるよう正面から説得し続けました。まさに『苦難福門』です。
様々な難関に襲われましたが、ついに福門が開き、事業再生は実現したのです。 あれから16年が経過し、今の経営状況は様変わりしました。
人生で大きな決断を迫られることは稀です。その時に、正しい選択が出来るかどうかは、普段の学びと実践の積み重ねが大きな力になることを実感しています。
※捨我得全 : 絶体絶命のときには、思い切って欲心を捨ててしまうと、思いもよらぬ好結果が生ずるということ ー『万人幸福の栞』第12条
(2021.9.1)